コラム

公益通報者保護法

公益通報者保護法について⑦~取締役の通報先について~

弁護士 小島梓

 公益通報として保護されるのは、公益通報者保護法に定められている通報先に通報した場合に限られるということを、「公益通報者保護法について⑥~労働者の通報先について~」のコラムでご紹介しました。今回は、公益通報者が「役員」である場合に、どういった条件でどこに通報すれば保護されるのかについてご説明します。

 まず、役員が、以下の要件を満たす公益通報を行った場合、当該公益通報をしたことを理由として、解任された場合には、会社に対して解任によって生じた損害賠償を請求できる(公益通報者保護法6条柱書)という形で保護されることになっています。
 通報先ごとにその要件を簡単に見ておきましょう。

(1)勤務先(公益通報者保護法6条1号)
 「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」に勤務先に通報した場合には保護の対象となります。
 この点は公益通報者が労働者である場合と同様です。

(2)行政機関等(公益通報者保護法6条2号)
 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対して以下のいずれかの要件を満たす通報をした場合、保護の対象となります。
①調査是正措置をとったにもかかわらず、なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由がある場合。
②通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当な理由があり、且つ個人の生命もしくは身体に対する危害又は個人の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合。

 上記の通り、取締役自ら調査是正措置をとることなどが要件に加わっており、労働者が公益通報者である場合に比較して、厳しいものになっています。

(3)マスコミなど(公益通報者保護法6条3号)
 マスコミや被害者などに対して、次のいずれかに該当する通報をした場合に保護されます。
①調査是正措置をとることに努めたにもかかわらず、なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合。
イ 勤務先や行政機関に公益通報した場合、解任、報酬の減額その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ロ 勤務先に公益通報をした場合、当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ハ 勤務先から、勤務先や行政機関に公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

②通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 上記のとおり、全体的に、労働者が公益通報をする場合に比べて、保護されるための要件が厳しくなっているのが特徴になります。