公益通報者保護法について⑧~労働者の不利益取扱いの禁止について~
弁護士 小島梓
公益通報者保護法では、公益通報者を保護するため、公益通報を行った者に対する不利益な取り扱いを禁止しています。通報者ごとに、具体的にどのような取り扱いが禁止され、禁止されることによる効果はどういったものかをご説明します。
なお、以下の説明はすべて、平成2年6月改正法を前提といたします。
(1)公益通報者が労働者の場合
ア 解雇の禁止
労働者が公益通報を行ったことを理由として解雇することは禁止されています(公益通報者保護法3条1項目柱書)。そして、仮に公益通報したことを理由としてなされた解雇は無効となります。
イ 降格、減給、退職金の不支給、その他不利益な取り扱いの禁止
労働者が公益通報を行ったことを理由として、降格、減給、退職金の不支給その他の不利益な取り扱いをすることは禁止されています(公益通報者保護法5条1項)。そのため、仮に会社によってこれらの取り扱いがなされた場合は、原状回復や差し止めの対象となると考えられています。
(2)公益通報者が派遣労働者の場合
ア 解除の禁止
派遣労働者が公益通報したことを理由として、派遣契約の解除を行うことは禁止されています(公益通報者保護法4条)。当該理由によりなされた契約解除は無効となります。
イ 派遣労働者の交代、その他不利益な取り扱いの禁止
派遣労働者が公益通報したことを理由として、派遣会社に対して当該派遣労働者の交代を求めたり、その他不利益な取り扱いをすることは禁止されています(公益通報者保護法5条2項)。そのため、実際に当該理由により交代がなされてしまった場合には、交代前の状態に戻すなど原状回復の対象となると考えられています。
以上が公益通報者が労働者、若しくは派遣労働者であった場合の不利益取扱い禁止の内容と効果です。 他方、公益通報者が取締役等の役員だった場合、内容が異なります。
そこで、次回は取締役等の役員の場合について、コラムでご説明したいと思います。